03


驚いている夏野の手に自分の手を被せ、ぼそぼそと小さい声で呟く。

「ンッ…オレだって…男だもん」

夏野に触れたいし触れられたい。恥ずかしいけど、夏野になら何されてもいいって本気で思ってる。だから、

「ん…はっ…ぁ…」

重ねた手を動かす。

「千尋…」

そのうち主導権は夏野に移っていて、布の上からじゃなくパジャマと下着を下ろされ、直に愛撫されていた。

「あっ…ゃ…ンンッ」

すっぽりと夏野の掌に包まれ、先端からはぐちゅぐちゅと湿った音が溢れる。

「気持ち良いか?」

「ンっ…いい、からっ…もぅ…あぁっ…」

「イっていいぜ」

「…ひっ…ぁっ…ぁあっ…ンッ…っ!」

グリグリと親指の腹で先端を刺激され、俺は夏野の掌に呆気なく熱を解き放った。

「ふっ…はっ…はぁ…」

「良く出たな」

ベロリと汚れた掌を舐める夏野を肩で息をしながらぼぅっと眺め、はっと我に返る。

「なっ、何舐め…!汚いよ!」

「前にも言ったろ?お前のが汚いわけないって。もう舐めちまったしな」

「うっ…でも…」

「ほら、下履け」

汚れなかった下着とパジャマを着せ直され、宥めるように髪を撫でられる。そして、胸の中にまた抱き寄せられて俺は口を開いた。

「夏野は…?」

「俺?」

「うん、だってオレしか…」

カァと赤くなり、もごもごと言葉に詰まりながら、もしあれならオレが…と続けた所でクスリと笑った声に遮られた。

「何で笑うんだよ?」

「いや、可愛いなって。その気持ちは嬉しいけど、今夜はダメだな。お前明日は一限からだろ?」

「そうだけど…それが?」

「じゃぁやっぱりダメだ」

「だから何で?」

ダメだダメだと言われてちょっぴりムッとする。

オレが下手くそだから?

不機嫌さを隠さずに夏野を見上げれば、夏野は困ったように笑い、耳元に唇を寄せてきた。

「だってお前、足腰立たなくなったら困るだろ?」

「えっ…!?」

可愛い恋人に誘われたらもう止めてやる自信がないから、と悪戯っぽく囁かれて俺の思考はカチンと固まった。

ううっ、と妙な声を出して固まった千尋を瞳を細めて愛しげに見つめる。

きっとぐるぐる考えているのだろう。

ゆるく抱いた千尋の背をポンポンと叩き、落ちつかせる。

「俺の事はいいからもう寝ろ。明日起きれなくなるぞ。ん?」

「夏野。…オレ、別に良い。一限ぐらい休んだって…」

「ダメだ。ケジメはきちんとつけておかないとまた同じ事を繰り返すことになるぞ」

一度許してしまえばずるずるといってしまう。恋人としては嬉しい言葉だが千尋のアニとしては認められない。

「行きたい大学に通う為に俺と一緒に家を出たんだろう?」

表向きは。

「…うん」

それは千尋も分かっているのか小さな声で頷く。

「そうだな、明後日。土曜日になれば一日中一緒に居られるから。その時、続きしような。…いっぱい愛してやる」

額にかかった千尋の前髪を払い、ちゅっと口付ける。

「それまではこれで我慢してくれ」

額から瞼、目元、鼻先、頬、唇へとキスを降らせた。

「ん…我慢する。…代わりに、もっとぎゅっと抱き締めて」

「それならいつでもしてやるよ」

ふにゃりと嬉しそうに崩れた笑顔に俺も笑みを溢し、瞼を閉じる。

擦り寄ってくるぬくもりに、寂しい思いをさせた分だけ休みの日は甘やかしてやろうと決めた夜だった。



END


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